食べる結晶*チョコのテンパリング(温度調整)を解説【簡単な方法やレシピも紹介】

2023年1月11日更新
テンパリングという、チョコレートの温度を調整する工程のことを知っていますか?
この記事では、テンパリングについて、どこよりも詳しく説明していきます♪
目次
ここだけ読めばなんとなく分かる・・・。
▽どうしてテンパリングするの?(目的)
テンパリングの目的とは、ずばり「おいしいチョコレートをつくる」こと。
⇨テンパリングとは
▽どうなればテンパリング成功なの?(目標)
その目的を達成するためには、ココアバターの結晶をV(5)型に整える必要があります。
⇨テンパリングの要。ココアバターを解説
▽成功のためには何をするの?(行動)
ココアバターの結晶を整えるための方法は、チョコレートの温度を調整すること。
つまりこのチョコの調温操作のことを、テンパリングと呼んでいるのです。
⇨テンパリングの基本的な方法
▽私たちが簡単にやるには?(方法)
では、私たちがテンパリングをやるには、どのような方法があるのでしょうか?
⇨テンパリングの簡単な方法
私たちが当たり前に感じている、チョコレートのおいしさは、テンパリングの工程があって初めて実現する奇跡的な食感なのです。
チョコレート研究の第一人者である佐藤清隆さんは、チョコレートのことを「食べる結晶」とも表現しています。なんてロマンティックな言い方でしょう。
よろしければ最後まで読んでみてください♪
テンパリングとは
1.1. テンパリングとはおいしいチョコをつくる調温操作のこと
テンパリングの目的とは、おいしいチョコレートをつくることにあります。
常温では解けずに、パキっと音を立てて割れて、口に入れると初めて解け、香りや味わいが口や鼻いっぱいに広がる。
いつも食べている、おなじみのチョコレートの味わいも、テンパリングのなせる技なのです。
1.2. 「テンパリング」という言葉を説明
1.2.1. チョコレートのテンパリング
言葉の使い方としては・・・
「テンパリングをする」は⇨温度調整を「する」
「テンパリングをとる」 は⇨適切な温度を「とる」
「テンパリングが外れる」は⇨適切な温度帯から「外れる」
のような使い方をします。専門用語って慣れるまで難しいですよね。
1.2.2. カレーのテンパリング
ちなみに、「テンパリング」という言葉は、カレーづくりにも登場します。
カレーづくりにおけるテンパリングとは、スパイスを油で熱して香りを引き出し、油にその香りを移すことです。
チョコレートのテンパリングを検索して、カレー作りの情報が出てきた皆様・・・おかえりなさい!
出典:https://www.asc-jp.com/syokubu/spice/スパイスのテンパリング方法/
1.3. テンパリング成功!3つの証
テンパリングが成功しているチョコレートの特徴を挙げてみます。
① 表面がつるつるひかっている(光沢性)
② パキッと音をたてて割れる(スナップ性)
③ 香りが良く、口の中でゆっくり溶ける(融解性)
うんうん。おいしい味が想像できます。
1.4. テンパリング失敗の場合
表面に白くブルームが出る
食感がボソボソしている
融点が低く固まらない
風味が劣化する
型離れが悪くなる
想像しただけでもおいしくなさそーー。
出典:チョコレートくんのチョコラボ
テンパリングの要。ココアバターを解説
テンパリングを成功させるためには、ココアバターの結晶をV(5)型に整える必要があります。
おいしいチョコづくりに無くてはならないテンパリングですが、それもココアバターという脂質の持つすばらしい特徴があってはじめて意味を持つ技術。ここでは、奇跡の油脂ココアバターについて解説します。
2.1. 常温で溶けず体温でとろける
世の中にはさまざまな油脂がありますが、ココアバターはとても個性的な脂質と言えます。
同じ固体脂を含む油脂であるバターと比較した有名なグラフを見てみましょう。
出典:チョコレートを美味しくする物理 | ニュースルーム | KEK
https://www.kek.jp/ja/newsroom/2013/02/12/1000/
バターは温度が上昇するにつれて、だらだらと溶けていきます。
しかしココアバターは25度を超えると徐々に溶け始め、30度をこえたあたりで一気に溶けることがわかります。
「常温では固体だけれど体温や口内で溶けていく」おいしいチョコレートの特徴は、ココアバターの個性そのものと言えます。
2.2. ココアバターの化学的説明
2.2.1. ココアバターは主に3種類の脂肪酸からできている
ココアバターの約80%強は、オレイン酸(Oleic acid)、パルチミン酸(Palmitic acid)、ステアリン酸(Stearic acid)の3種類の脂肪酸からできています。また、全体の3%以下というかなり少量ですが、リノール酸(Linoleic acid)も含まれています。
2.2.2. ココアバターは6種類の結晶構造がある
ココアバターの脂質は、結晶多型(けっしょうたけい)といい、同じ原子・分子でも異なる結晶構造をつくることができます。
ココアバターの結晶は、Ⅰ(1)型、Ⅱ(2) 型、Ⅲ(3) 型、Ⅳ(4) 型、Ⅴ(5) 型、Ⅵ(6)型の6種類があり、チョコレートに最も適した結晶は準安定型の「Ⅴ型」の結晶です。
テンパリングでは、このⅤ型の結晶を作ることを目標にしており、先に述べたバターとの比較も、Ⅴ型結晶の時のココアバターについて表現しています。
2.3. 結晶多形と融点・安定性のについて
それぞれの結晶の違いは下記の表をごらんください。
2.4. 分かりやすい動画を紹介
チョコレートを化学的に説明した、高校生向けの動画を見つけました。
とても分かりやすいので、ぜひご覧ください。
覚えておきたい特徴としては、それぞれの脂肪酸や、結晶の融点(溶ける温度)が違うという点です!
テンパリングの基本的な方法
3.1. テンパリングの基本は温度を、①上げて→②下げて→③上げて→④下げる
ココアバターをV型結晶に整えるための、基本的なテンパリング方法をご紹介します。
原理としては、チョコの一部にV型結晶(種結晶)を作り、それを元にチョコ全体を連鎖反応でV型結晶のみに整える。というやり方です。
温度を「①上げて(融解)」「②下げて(下降)」「③上げて(調整)」「④下げる」の4ステップで調整すると覚えましょう。
- 上げて(融解):まずはチョコレートを溶かし50°C 前後(融解温度)にする。
*60度以上になると結晶が最大化してざらつきが出るので要注意。 - 下げて(下降):融けたチョコレートを撹拌しながら冷却し 約27 °C(下降温度)に下げ、この温度を一定時間保持する。
*結晶型:Ⅲ型・Ⅳ型 - 上げて(調整):31 °C(調整温度)程度に上げる。
*結晶型:Ⅴ型結晶が一部生じる。(種結晶) - 下げる:型などに入れて冷やし固める。
*結晶型:③で出来たⅤ型結晶がチョコ全体に広がる。
出典:v chocoチョコレート -そのおいしさを科学する-化学工学
- 融解温度・・・最初にチョコレートを溶かす温度
- 下降温度・・・氷水にボウルをあてて冷ます温度
- 調整温度・・・再び温める温度
3.2. やってみよう!基本のテンパリング方法(難易度★★水冷法)
3.2.1. 材料
- チョコレート(市販の板チョコでOK) 適量
- お湯
- 氷水(夏場のみ。冬場は水道水で十分です。)
3.2.2. 道具
- ボウル大 2個(お湯用1個・氷水用1個)
- ボウル小(ステンレス) 1個
- ゴムベラ 1個
- 温度計
- お湯を用意する鍋または電気ケトルなど
- (調整温度の際にドライヤーを使う人もいるようです)
ボウル大は最低1個あればつくれます。
ですが、お湯と氷水を入れ替える手間を省くために、2個のボウルを使うのをおすすめします。
3.2.3. やり方
LOTTEのサイトがシンプルなのでご紹介します。
出典:https://www.lotte.co.jp/entertainment/recipe/technique/food1/
テンパリングの簡単な方法
テンパリングには基本的なものの他に、職人が経験から見つけ出した方法や、初心者向けに考案された商品を活用する方法など、より簡単に失敗なく成功させるやり方がいろいろあります。
4.1. 種結晶を後から追加する方法
代表的な例として、溶けたチョコレートの中にV型の種結晶を後から追加して、全体をV型結晶化する方法があります。
4.1.1. V型結晶のチョコレートを追加する方法
30度ほどに調温度した未テンパリングのチョコレートに、すでにV型結晶になっているチョコレートを細かく刻んだ粉末や、V型にテンパリングしたチョコレート融液を、後から追加する方法です。
調温のみで行うテンパリングより短い時間でテンパリングをとることができます。
4.1.2. V型結晶のココアバターパウダーを添加する方法
出典:cuoca-はじめてのテンパリングで失敗しないために-
すでにV型結晶になっている既製品のココアバターパウダーを、未テンパリングチョコレートに添加する方法もあります。
このココアバターパウダーは誰でも失敗なくテンパリングができるよう製菓材店などが販売しています。
全体の1%程度を添加すれば良い点や、使用するチョコレートの量が少量(100g位)で済む点から、気軽に試せる方法です。
4.2. 電子レンジを活用する方法
お湯と氷水を用意する手間を省き、水の混入による失敗を避けるためにも、電子レンジを活用する方法もおすすめです。
4.3. やってみよう!簡単なテンパリング方法(難易度★電子レンジ+ココアバターパウダー)
4.3.1. 材料
- チョコレート
- ココアバターパウダー
ココアバターパウダー販売先の一例
https://www.cotta.jp/products/detail.php?product_id=027277
https://tomiz.com/item/00121401
https://www.cuoca.com/fs/cuoca/1381/00121401
4.3.2. 道具
- レンジに対応しているボウル 1個
- ゴムベラ 1個
- 温度計 1個
- 電子レンジ(参考サイトは600Wで加熱しています)
Cottaのサイトがわかりやすいのでご紹介。
出典:cotta- 成功するテンパリングガイド-
https://www.cotta.jp/special/event/valentine/tempering.php#4937
さらに簡単。テンパリング不要チョコを使おう
出典:cotta-ルセーラスイートチョコ-
https://www.cotta.jp/products/detail.php?product_id=027274
もっと簡単な方法をご紹介します。それはテンパリング不要チョコレートを使うこと。
「え、今までの説明は必要だったの!?」
「そんな便利なものあるなら普通のチョコレートを使う必要があるの?」
こんな疑問が頭に浮かんだ方。わかります。初めから教えてほしいですよね!!
5.1. ココアバター以外の油脂が入っている
出典:富澤商店-コーティングチョコレートの使い方基本編- https://tomiz.com/column/pate-a-glacer-part1/
テンパリング不要チョコはなぜテンパリングが不要なのでしょう。
それは、ココアバター以外の植物油脂などを利用しているチョコレートのため、V型結晶に整える必要がないからです。さまざまな人の油脂研究による賜物ですね。
純粋にココアバターのみ使用したチョコレートが良いというこだわり派の人以外は、試しに利用してみてはいかがでしょうか。
5.2. テンパリング不要チョコはどこで購入できる?
5.2.1. 製菓材店
【cotta】ルセーラ
https://www.cotta.jp/products/detail.php?product_id=027274
【富澤商店】
ノベルビター(上掛け用チョコ)
https://tomiz.com/item/00130901
イルカ ノベルラッテ(ミルク)(上掛け用チョコ)
https://tomiz.com/item/00135001
バータグラッセ ラ・プルミエール
https://tomiz.com/item/01079001
【cuoca】コーティングチョコ一覧
https://www.cuoca.com/fs/cuoca/c/1377
5.2.2. 100均でも売っているようです
出典:百円図鑑https://100yen-zukan.com/products/detail/4935
100均×Sweetsレシピ!!https://ao-recipe.com/daiso-couverture-coating-chocolate-23420
テンパリングの応用・失敗したときの対応
ここでは、一般的なミルクチョコレート以外のチョコのテンパリング方法や、温度計なしで挑戦している人の参考例、そして失敗してしまったときの対処法をご紹介します。
6.1. ダーク・ミルク・ホワイトチョコレート別のテンパリング温度
乳脂肪(乳脂質)が添加されているチョコ(ミルクチョコレート)と、ココアバターのみ使用したチョコ(ダークチョコなど)では、結晶速度や融点などが変わります。
何となく想像ができますよね。
- ダークチョコレート(スイートチョコレート)
- ミルクチョコレート
- ホワイトチョコレート
なので上記3種類の適温は異なってきます。
Cuocaさんに分かりやすい表があったので、一部引用させていただきます。
出典:https://www.cuoca.com/library/contents/contents_tenparing_ondo.html
- 融解温度(上げて)・・・最初にチョコレートを溶かす温度
- 下降温度(下げて)・・・氷水にボウルをあてて冷ます温度
- 調整温度(上げて)・・・再び温める温度
メーカー・ブランド | チョコレートの種類 | 溶解温度 | 下降温度 | 調整温度 |
一般的なチョコレート | スイートチョコレート | 50〜55℃ | 27〜29℃ | 31〜32℃ |
ミルクチョコレート | 45〜50℃ | 26〜28℃ | 29〜30℃ | |
ホワイトチョコレート | 40〜45℃ | 26〜27℃ | 29℃ | |
ミルク | 48〜50℃ | 27〜28℃ | 29〜29.5℃ | |
クオカ | スイート | 45〜50℃ | 27〜28℃ | 31〜33℃ |
砂糖不使用スイート | 45〜50℃ | 30℃ | 32℃ | |
砂糖不使用ミルク | 45〜50℃ | 28℃ | 30℃ | |
砂糖不使用ホワイト | 45〜50℃ | 28℃ | 30℃ | |
※キャラメルとストロベリーはテンパリング不要 | ||||
大東カカオ | スイート | 50℃ | 27〜28℃ | 30〜31℃ |
ミルク | 45℃ | 25〜27℃ | 29℃ | |
ホワイト | 40℃ | 25〜27℃ | 29℃ | |
日新化工(NK) | 抹茶 | 40〜45℃ | 24.5〜25.5℃ | 29〜30℃ |
明治 | スイート | 50〜55℃ | 27〜29℃ | 31〜32℃ |
濃い苺・濃いレモン | 40〜45℃ | 25〜26℃ | 28〜29℃ | |
森永 | スイート | 45〜50℃ | 27〜28℃ | 31〜33℃ |
ミルク | 40〜45℃ | 26〜27℃ | 28〜30℃ | |
ホワイト | 40〜45℃ | 26〜27℃ | 28〜29℃ |
6.2. 温度計なしでもできる!?
チョコレートを加工したい!けれど温度計がない。という人も多いはず。
そこで、温度計なしでもできるテンパリングを調べてみました。
しかし、こちらはまさに経験や感覚が大切な印象をうけました。
成功のコツは・・・
・チョコレートに加えるエネルギー量が把握しやすい電子レンジ法を利用する。
・プロの行うテンパリング動画を事前によく見て、感覚をつかんでおく。
・・・個人的には素直に温度計を購入します。
電子レンジ活用の例
https://cookpad.com/recipe/7084516
https://cookpad.com/recipe/3757692
水冷法を利用している例
https://cookpad.com/recipe/1362779
https://campingdog.net/3055.html
6.3. 失敗してもやり直しができる!?
出典:cotta-テンパリングのよくある失敗- https://recipe.cotta.jp/success/vol16.php
6.3.1. 失敗例
固まらない
調温途中で固まってしまった
ブルームができてしまった
ツヤがない
6.3.2. 原因
テンパリングが取れていない(温度調整に失敗している)
途中で水が入ってしまった
固める温度が低すぎた
など
しかし、もう一度よく攪拌し、調温をすることで再度テンパリングをとれる可能性は十分あります。(何度もやり直しをする場合などはむずかしくなってきます)
6.3.3. テンパリング再挑戦の方法
- 60度の湯煎で再びチョコレートをとかします。ゆっくりと、滑らかで光沢のある液体になるまで今期よく混ぜましょう。
- 氷水にボウルを移して下降温度まで下げます。
- 再び調整温度に上げて成分全てが馴染むようにすることで再度テンパリングが取れている状態になります。
6.3.1. プロの技術で失敗をリカバリーしている動画を発見
ファットブルームだらけのチョコを再度テンパリングして復活させています!
さすがです。
出典:【こんなに変わる】ブルームだらけのチョコレートをテンパリングしてツヤツヤに蘇らせてみた
6.4. もうやりたくない!場合は他のお菓子に活用しよう♡
もし失敗してしまって、再度テンパリングをとれなかったり、もうやりたくない!と思ったりした場合も、手元のチョコをあきらめる必要はありません!他のお菓子に活用しましょう♡
・生チョコレートにする
・焼き菓子に混ぜる
・ホットチョコレートにする
などなど、活用しだいで十分おいしく食べることができます。
ちなみに、筆者は水が入ってダマダマになったチョコをホットチョコレートにしてみました。
問題なくおいしいホットチョコレートが仕上がりましたよ♪
重要!テンパリング後の固め方
テンパリングをとることも重要ですが、それと同じくらい重要なことが、テンパリング後の固め方です。
7.1.1. 適温15度で固める
チョコレートを固める適温は15度。
おすすめはチョコレートを置く室温を15度にする方法です。
涼しい時期は良いですが、夏場はエアコンなどを活用する必要があります。
7.1.2. 冷蔵庫ではなくワインセラーや野菜室がおすすめ
冷蔵庫は温度が低すぎるため、せっかくテンパリングをとって調温をしたチョコレートが、きれいに固まりません。結晶が整えたⅤ型からⅥ型に変化して白くブルームができてしまいます。
ワインセラーや、温度調整ができる温冷庫などがあると便利ですが、ない場合は野菜室(約3〜8℃)がおすすめです。
テンパリングの活用レシピ3選!
8.1.1. シンプル!型でつくるチョコレート
出典:明治(https://www.choco-recipe.jp/milk/recipe/079.html)
8.1.2. 間違いなくおいしい!オランジェット
出典:macaroni(https://macaro-ni.jp/31128)
8.1.3. 季節のフルーツ+チョコレート
出典:明治(https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/shokuikurecipe/recipe/0764.html)
科学的研究が進むテンパリング
テンパリングは、個人のお菓子作りやBean to barチョコ工房にとっても重要な要素ですが、企業が多量生産するチョコレートやチョコ菓子製造にも、大変重要な工程です。
ここでは、企業のテンパリング活用例や、最新の化学的研究結果をご紹介します。
9.1. 企業のテンパリングや油脂の活用例
9.1.1. 冬向け・夏向けチョコは油脂や技術が異なる
冬季限定のふわっととろけるチョコと、夏季でもパリっと歯触りの良いチョコでは、テンパリング時に必要となる技術や、油脂の種類が異なります。
ココアバターに含まれる脂肪酸の融点が違うことを活用し、配合などを調整することにより、より消費者に好まれる商品を生み出しているのですね。
出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/56/5/56_319/_pdf
9.1.2. あの「ガルボ」はべヘン酸を利用している
有名な「ガルボ」というチョコ菓子に採用されている一例をご紹介します。
べヘン酸という脂肪酸を利用して、チョコレートの結晶の融点を上げる方法を用いているそうです。
つまり、クッキー生地に染み込む高温のサラサラなチョコレートなのに、テンパリングからは外れない。テンパリングから外れないので、V型結晶のおいしさを保持したまま冷やし固めることができる。とのこと。
この性質を利用して、チョコが染み込んでいるのに、ポキっと軽快な歯触りのおいしいガルボになるんだそう。
とても面白いですよね。
出典:APeCA(科学的な視点からカカオを研究。広島大学名誉教授・佐藤清隆さん インタビューvol.1)
https://www.apeca.co.jp/feature/932/
明治-ガルボ-(https://www.meiji.co.jp/products/brand/galbo/)
9.2. 最新の研究!テンパリングが科学的に解明されました
チョコレートの長い歴史の中で、テンパリングは職人の経験から伝承されてきた部分が大きいです。
しかし、最新の研究からテンパリングが成功するメカニズムが科学的に解明されました。
2021年に、テンパリングはココアバターに微量に含まれている「リン脂質」の働きが元になり生じているという研究結果が発表されたそうです。
80%以上を占める脂質部分ではなく、その他の微量な成分がキーマンだったなんて、驚いた人も多いのではないでしょうか。
カナダ・ゲルフ大学食品科学科のジェイ・チェン氏、サイード・M・ガズニー氏、ジャービス・A・ストッブズ氏、そしてアレハンドロ・G・マランゴーニ教授の研究
出典:https://www.nature.com/articles/s41467-021-25206-1
まとめ
ここまで読んでいただきありがとうございます。
チョコレートにおけるテンパリングや油脂の重要性がすこしでも理解できるようになっていたら嬉しいです。
コンビニやスーパーで気軽に買っているチョコレートも、テンパリング技術や油脂の研究を日々行ってくれている人たちの努力の結晶なのですね。・・・全く予期せず大喜利みたいなまとめになった・・・
また、家族や恋人、友達がバレンタインなどに作ってくれるチョコレートに「これ溶かして固めただけじゃん」なんて思った経験のあるそこのあなた。その考えを改めて愛を再確認できるきっかけになれば幸いです。
おいしいって、愛ですね〜。
引用
https://sweetsvillage.com/sweetsrecipe/recipe/bon-bon-chocolat/
https://recipe.cotta.jp/success/vol16.php
https://www.cuoca.com/library/contents/contents_tenparing_ondo.html
https://note.com/geltech/n/n3790e43a3ca6
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/56/5/56_319/_pdf
https://patentimages.storage.googleapis.com/fe/e2/49/94d879a29e4e8b/JP3661593B2.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1996/48/10/48_10_1185/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/37/6/37_6_431/_pdf
https://www.patissient.com/wiki/テンパリング
https://www.meiji.co.jp/hello-chocolate/basic/06.html
https://www.netsu.org/JSCTANetsuSokutei/pdfs/41/41-3-104.pdf
https://ja.wikipedia.org/wiki/ココアバター
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjacg/41/4/41_KJ00009702512/_pdf
https://gigazine.net/news/20210906-chocolate-tempering-easy/
https://www.nature.com/articles/s41467-021-25206-1
https://www.kyounoryouri.jp/recipe/18395_テンパリング.html
https://suit-chocolate.com/チョコレートの乳化剤、レシチンって何?/
https://manabingo.com/tempering-fukkatsu/
https://www.profoods.co.jp/tempering
https://www.cotta.jp/products/detail.php?product_id=027277

雨宮 麻美
Asami Amemiya