チョコレートの原料、カカオ豆はどこからやってくる?産地・品種ごとの特徴を解説!エシカルチョコレートの選び方も

チョコレートの原料となるカカオ豆。カカオの木になる実の中に入っているのがカカオ豆ですが、カカオには様々な品種があるのをご存じですか。
カカオ豆が採れるのは世界の限られた地域で、産地によっても風味が異なります。
この記事では、カカオ豆がどこからやってくるのか、産地や品種ごとの味わいや、注目の産地、カカオ産地と私たちの暮らしとのつながりを解説します。
目次
チョコレートの原料、カカオ豆とは?
カカオ豆とは、カカオの木になる実の種
カカオの成木は高さ6~7mになる
カカオ豆を収穫するカカオの樹は、成木では高さ6~7mに成長します。カカオの樹は直射日光に弱いため、大きく育つまでに、周囲に日陰となる樹々(シェイドツリー)を必要とします。
カカオの木からカカオ豆が収穫できるまでに3~4年かかる
一般的にはカカオの苗を植えてから3~4年経つと実がなり、カカオ豆が収穫できます。
結実したカカオの実「カカオポッド」の中に、カカオ豆が入っている
チョコレートの原料となるカカオ豆は、結実したカカオの実「カカオポッド」の中に入っています。1つのカカオポッドの中には、30-40粒程度のカカオ豆が入っていて、これがカカオの樹の種です。
カカオ豆の主な産地
カカオの木が育つのは、高温多湿の熱帯地域
カカオが育つ「カカオベルト」は、西アフリカ・中南米・東南アジアにある
カカオの樹が育つのは、北緯20度から南緯20度くらいまでの熱帯地域。赤道に近く、高温多湿を好むカカオの生育に適したこの一帯は「カカオベルト」と呼ばれています。
カカオベルトが位置する地域は、アフリカ・中南米・東南アジアの国々などです。
世界の生産量の約76%がアフリカで生産されている
地域別にみた世界のカカオ豆の生産量は、アフリカが1位。世界の生産量の約76%がアフリカの国々で生産されています。
欧米の有名チョコレートブランドのカカオ豆も「カカオベルト」から輸入している
フランスやベルギー、イタリア、アメリカには多くの有名チョコレートブランドがありますが、寒冷な気候の欧米ではカカオ豆は生産できません。そのため、原材料のカカオ豆はカカオベルトから輸入しています。
日本が輸入するカカオ豆の約70%はガーナから
日本の製菓メーカーやチョコレートブランド利用しているカカオ豆の約70%はガーナから輸入しています。カカオ豆の生産量ではコートジボワールが一位ですが、日本への輸入量でみると生産量二位のガーナが逆転します。
ガーナに次いで多いのがベネズエラ産、エクアドル産
日本が輸入するカカオ豆は、ガーナに次いで3位はベネズエラ産、4位がエクアドル産といずれも南米が続きます。エクアドルの国名は「赤道直下の国」という意味で、標高も高くカカオ豆の生産に適しています。
産地名を前面に出してブランディングするチョコレートも増えている
産地名を前面に出すチョコレートブランドも近年増えています。コーヒー豆におけるシングルオリジンや「Bean to ba」rの考え方が、徐々にチョコレートの世界にも浸透しつつあるのです。
Bean to barについて詳しく知りたい方はこちら。
チョコレートのNew Normal!Bean to bar(ビーントゥーバー)を徹底解説
明治のmeiji THE Chocolate(明治 ザ・チョコレート)は、「産地で変わる、4つの香味。」と題し、ベネズエラ・ブラジル・ペルー・ドミニカ共和国の4つのランナップを展開しています。
産地食べ比べセットも人気
さまざまな産地のカカオ豆を使ったチョコレートを楽しめる食べ比べセットも人気が上昇中。
Royal Hotel 宗像では、カカオ豆ときび砂糖のみに限定して、カカオ豆本来の旨味を楽しめるセットを展開しています。
3. 代表的なカカオ豆の品種は3つ:クリオロ種、フォラステロ種、トリニタリオ種
カカオ豆の代表的な品種には、クリオロ種・フォラステロ種・トリニタリオ種の3つあります。
クリオロ種
栽培が難しく絶滅の危機に瀕している「幻のカカオ」
古代アステカ文明の皇帝が飲んでいたとされるショコラトルは、クリオロ種のカカオ豆と言われています。病害虫に弱く、栽培が難しい繊細な品種です。このため、絶滅の危機に瀕しているとされ、世界の栽培量に占める割合は0.5%。カカオ豆マーケットにはほとんど流通していません。
フォラステロ種
栽培しやすく、世界のカカオ生産量の80-90%を占めている
成長が早く、収量が期待できます。世界のカカオ豆生産量の80-90%を占めています。カカオ独特の苦み感をしっかり出すことができ、チョコレートの風味をつくる重要な品種です。
トリニタリオ種
クリオロ種とフォラステロ種の中間種で、栽培しやすく良質
世界のカカオ豆生産量の10-15%ほどを占めています。クリオロ種とフォラステロ種の中間種で、栽培しやすく良質なカカオ豆が収穫できます。名前の由来は、カリブ海の「トリニダード島」です。
チョコレートの歴史をもっと知りたい方はこちら。
産地によって異なるカカオ豆の個性
カカオ豆の個性は、産地によってさまざまです。まずは、生産量ナンバー1から4までの産地で収穫されるカカオ豆を解説します。
コートジボワール
世界の生産量ナンバー1、マイルドで香ばしい風味が特徴
世界の生産量のおよそ45%を占めるのがコートジボワール産。風味のバランスが取れ、ナッティな香ばしさが魅力です。
ガーナ
酸味・苦み・渋みのバランスが取れたフォラステロ種
日本でなじみが深いガーナ産は、酸味・苦み・渋みのバランスが取れたフォラステロ種です。飽きの来ないスタンダードな味わいで、日本の製菓メーカーやチョコレートブランドに欠かせない存在です。甘いナッツ感とはちみつのような風味が特徴です。
エクアドル
フローラルな香りと渋みで、フレーバービーンズとしても活躍
市場で最も多く流通するフォラステロ種が多いですが、エクアドル産カカオ豆には独特の香りがあり、ベースとなるチョコレートに使うにはやや強め。そのため、香りを添えるフレーバービーンズとして使わることが多いです。
ベネズエラ
雑味が少なく香ばしさとバランスが取れたクリオロ系の品種
希少性の高いクロオロ種が栽培されている貴重な地域です。香ばしいナッツの風味と、繊細かつ洗練されたチョコレートの風味を味わうことができ、高価格帯のチョコレートにも利用されています。
タンザニア
ボディが強く、余韻あるアロマ
タンザニア産カカオ豆は、トリニタリオ種、フォラステロ種が主な品種。強いボディと、深い味わいが特徴です。
マダガスカル
トロピカルでフルーティーな酸味
バニラビーンズの世界的産地として知られるマダガスカルですが、カカオ豆も生産されています。
年間生産量は7500トン程度ですが、フルーティーで酸味が楽しめる味わいが特徴。Bean to barでもマダガスカル産カカオ豆の人気は高まっています。
ペルー
フローラル感とローストフレーバーが魅力
アンデス山脈がそびえるペルーは、標高が高い土地でカカオ豆が生産されています。中南米ではブラジルに次いで第三位の生産量を誇り、フローラルな香りとローストフレーバーが特徴です。
その他の注目産地とおすすめブランド
カカオ豆の4大産地の他にも、注目が高まる産地があります。
ベトナム
酸味とフルーティーな香りが独特
ベトナムは、メコン川流域の豊かな土壌と穏やかな多湿気候がカカオの栽培に適しています。近年ではフランスやベルギーなどのチョコレートブランドが続々とベトナムに工場を設立。ベリー系の香りと酸味が特徴です。
Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)の「ベンチェ, ベトナム 70%」は、そんなベトナムのカカオ豆の魅力が味わえます。
ハイチ
アーモンドや杏仁のようなナッツ感とさわやかな香り
人口の6-7割が農業に従事しているハイチでは、カカオ豆は2番目に輸出量の多い品目です。カカオ豆の栽培に適した土壌で、クリオロ種系のカカオ豆が多く栽培されています。
カカオから作る横浜発のクラフトチョコレート「Chocola Meets」(ショコラミーツ)では、ハイチ産のカカオ豆をふんだんに使ったチョコレートが楽しめます。アーティストが描くパッケージを楽しむのも贅沢なひとときに。
ホンジュラス
最古のカカオ文化が誇る、希少なカカオ豆
古代の遺跡からカカオ豆の栽培跡が見つかったホンジュラス。年間生産量は1000トンと決して多くはないですが、キャラメルやナッツのような風味や爽やかな後味が魅力です。
テオブロマでは、ホンジュラスのカカオ豆を使用したビターチョコレートを販売。ホンジュラスに伝わる「マヤンレッド」という品種を使ったビターチョコレートです。
メキシコ
苦みが少なく、上品でほのかな後味
古代メキシコでは、カカオ豆は「神様の食べ物」とされていました。マヤ文明の時代から栽培されていたほど、カカオ文化の長い歴史を持つ国です。ほのかな後味で、癖のない上品な風味に仕上がります。
ウガンダ
「アフリカの真珠」で育つマイルドな風味
ナイル川の源流がある東アフリカのウガンダは、豊かな自然から「アフリカの真珠」と称されています。赤道直下でありながら過ごしやすい気候のウガンダ。日本ではあまり馴染みない産地ですが、アジア市場では安定した品質のベースビーンズとして人気です。西アフリカのコートジボワールやガーナとは違ったフルーティー感と軽やかな味わいが特徴です。
チョコレートを生産することで、社会全体が豊かになることを目的としているチョコレートブランド「ラティテュードクラフトチョコレート」では、ガンダ産の黒糖と合わせたキャラメルのような優しい味わいのホワイトチョコレートも選べます。
カカオの産地が抱える問題と私たちの暮らしとのつながり
カカオ農家が直面する貧困
カカオ農家の多くが零細農家。カカオ豆の取引価格によって収入が左右される
カカオ豆の約90%は零細農家によって生産されています。その多くは1日2ドル以下の所得で暮らす貧困層とも言われています。
チョコレート市場は世界的に拡大していますが、利益の大半が大手メーカーや中間業者に流れ、生産者に入る利益はわずか。
さらに、カカオ豆の世界的な取引価格の下落によって経済的に困窮するリスクに直面しています。
児童労働によって生産されるカカオ豆も
世界第1位と第2位のカカオ生産国であるコートジボワールとガーナでは、18歳未満の児童労働者は156万人にのぼると言われ、労働者を雇えない小規模なカカオ農家では、子どもが労働力となることもあります。
参考:特定非営利活動法人ACEホームページより
カカオ生産者や産地を守る、エシカルなチョコレート
フェアトレードで、公正な価格取引を担保する
フェアトレードとは、直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、産地の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。フェアトレードチョコレートは、適正な労働環境のもとで生産されたカカオ豆を使ったチョコレートです。
参考:特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン ホームページより
エシカルなチョコレートを選びたいときは、「国際フェアトレード認証ラベル」がついたチョコレートを選んでみてはいかがでしょう。
産地の環境に配慮し、雇用創出につなげる
ここ数年、産地に根づいたエシカルなカカオ豆を生産する農家や企業も増えています。人権に配慮するだけでなく、産地の環境を守りながらサステナブルな農法に取り組んでいます。
カカオ豆は、アグロフォレストリー(森林農業)で栽培されます。カカオは日陰を必要とする作物のため、カカオ単体ではなく、日陰になる樹も一緒に育てる農法なのです。
美味しくサステナブルなカカオ豆で、産地の「貧しい」を変える
「farm of Africa」は、ウガンダで日本人による初のカカオとバニラの生産を担う企業として設立されました。経営者は日本人の夫妻ですが、地元の女性たちがスタッフとして働き、雇用の創出にもつながっています。
アグロフォレストリーで循環型農法に取り組み、高品質のカカオ豆を日本やヨーロッパに届けています。
インタビュー記事はこちら
おすすめのフェアトレードチョコレート3選
Chocolat Stella(ショコラステッラ)
スイスのチョコレートメーカー Stella Bernrain社が製造。1991年から20年以上にわたり、主にエルサルバドルのカカオ豆とフィリピンの砂糖を用いたチョコレートを作っています。現地の生産者たちの苗床づくりから、発酵・乾燥設備の設置まで一貫したサポートをしています。
カカオ農家の多くは零細農家のため、品質を向上させるための設備投資に十分な資金を充てられません。こうしたサポートを通して、良質なカカオ豆を生産し、消費者がチョコレート製品の向こうにあるカカオ農家の現状や適正価格での取引きに意識が向くことが期待されています。
日本でもAmazonなどの通販で購入することができ、おすすめはザクロのチョコレート。
GEPA(ゲパ)
1975年にドイツで設立されたGEPAは、40年以上フェアトレードチョコレートを製造しています。ワインやコーヒー、紅茶など幅広くフェアトレード商品を販売し、取引先はアフリカ、中南米、アジアなど45カ国にのぼります。砂糖はマスコバド糖(絞ったサトウキビを煮詰めたもの)を利用しているため、ミネラルが豊富なのも嬉しいですね。
日本からは楽天などで購入が可能です。
ピープルツリー
日本初のフェアトレードチョコレートの代表格。中南米をはじめとしたカカオ・黒糖・粗糖を使用しています。
不安定な収穫量や変動の激しい国際価格に悩まされる生産者のために、30%〜50%の代金を前払いして、金利の高いローンに頼らず自立できるよう支援しています。
また、チョコの包み紙にあるカカオポイントを集めて応募すると、カカオ生産地へ苗木の寄贈などができ、現地とのつながりを感じられるのも魅力。集めたカカオポイントで、可愛いイラスト入りのオリジナルグッズももらえます。
https://www.peopletree.co.jp/choco/
オーガニックチョコレートについて詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめ。
読めば分かる!オーガニックチョコレートの価値と見分け方【おすすめ紹介・食レポ付き♪】
まとめ
カカオ豆の産地と品種、生産者の暮らしを知ることで、チョコレートの世界が深まる
チョコレートの原料カカオ豆の産地と品種を知ることで、さまざまな味わいに気づき、今よりもっとチョコレートの世界を楽しめるはずです。
また、産地の暮らしや地域に思いを馳せ、エシカルなチョコレートを選ぶことで、人と地球に優しいチョコレートライフを送ってみてはいかがでしょうか。

小島 美緒
Mio Kojima