CACAOLOGY VOICE

CACAOLOGIST VOICE #004 エイトブランディングデザイン代表 西澤明洋さん

2022.8.2

カカオの新たな形を探求するチョコレートブランド「CACAOLOGY」。ブランドの立ち上げにゼロから伴走してきたのが、ブランディングを専門とするデザイン会社「エイトブランディングデザイン」のブランディングデザイナー西澤明洋さんです。クラフトビール「COEDO」をはじめ、数々の有名ブランドに携わってきた西澤さんがカカオロジーと出会ったきっかけとは?ブランディングデザインの魅力とチョコレートが秘める可能性についてお聞きしました。

西澤明洋さん プロフィール


西澤 明洋(にしざわ あきひろ)/ ブランディングデザイナー

1976年滋賀県生まれ。株式会社エイトブランディングデザイン代表。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行う。リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、スキンケア「ユースキン」など。著書に『ブランディングデザインの教科書』(パイ インターナショナル)ほか。デザイン誌での特集に『デザインノート/西澤明洋の成功するブランディングデザイン』(誠文堂新光社)がある。

ビジネスや経営に効くブランドを生み出す
ブランディングデザインの仕事

──西澤さんにはカカオロジーのブランディングをトータルにサポートいただきました。そもそもブランディングデザインとはどのようなお仕事なのでしょうか?

エイトブランディングデザインは、ブランディングを「商品、サービス、もしくは企業全体としてのイメージに、一定の方向性をつくり出すことで、他者と差異化すること」と定義しています。ロゴやパッケージデザイン、商品開発や店舗開発など幅広いジャンルのデザイン要素をかけあわせることで、ビジネスや経営に効くブランドづくりを進めています。

また、ブランディングを経営戦略から考えるための思考フレーム「ブランディングデザインの3階層®」や、ブランディングプロジェクトの進め方「フォーカスRPCD®」など独自の手法を開発し、本当の意味で「伝わる」ブランドづくりを心がけています。

──ブランディングデザインの道に進んだきっかけは?

僕自身、大学では建築を学び、大学院の時に 「デザイン経営」の概念を知りました。デザイン経営とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法のことです。今でこそ、国を挙げてデザイン経営を推進していますが、当時は一部の大企業が採用するのみで、まだまだ一般には浸透していませんでした。

卒業後はメーカーでプロダクトデザインに携わっていましたが、経験を活かして「ブランディングデザインを専門でやってみよう」と2006年に株式会社エイト(2010年に株式会社エイトブランディングに社名変更)を設立しました。

──デザイン経営の本質とはどのようなものでしょうか?

言葉の通り、経営をデザインすることです。いわゆるグラフィックデザインやWEBデザインはアウトプットの一部で、ブランディングにおいては、マネジメント(経営戦略)からコンテンツ(商品や店舗、サービスなど)、コミュニケーション(ウェブサイトやパンフレット、広告など)までが一気通貫しデザインされていることが重要です。

僕たちは、クライアントの企業戦略に応じて、戦略立案からコンセプト開発、プロダクト開発、ロゴ、パッケージ、WEBデザインまでトータルで考えています。

ブランディングデザイナーの仕事は建築家に近いと思っています。建物を建てる際、まずご依頼主のご要望や条件を整理し、土地の地盤や周辺環境をリサーチします。その上で、どのような構造・意匠の建物を作っていけるかを一緒に話し合いながら進めていく。

僕たちも同じようにクライアントの思いや将来のビジョンを細かくヒアリングした上で経営戦略を構築していきます。

クライアントとの”共創”で強いブランドを作る

──カカオロジーとの出会いのきっかけは?

代表の佐々部さんからお問合せをいただいたのがきっかけです。これまで、既存ブランドのリブランディングや新ブランドの立ち上げなどに多く携わってきましたが、カカオロジーのように全くの新規事業、さらにゼロからブランドを作るという案件はほとんどありませんでした。ですから、話をいただいて率直に「面白そうだ」と思いましたね。

佐々部さんとお会いして、「どこにもないチョコレートブランドを作りたい」という熱い思いに心を動かされました。

──ブランド開発において大変だった部分は?

商品企画です。ひとことで「チョコレート」と言ってもレシピは無限にあり、カカオの個性によって味わいもさまざまです。でも、既存の固定概念にとらわれず、自由に発想できたのがよかったなと思います。

佐々部さんはじめカカオロジーチームの皆さんとは、商品コンセプトから方向性、具体的な商品ラインアップまで何度もアイデア出しをしました。コミュニケーションを重ねるうちにチームとしての一体感が育まれ、新たなアイデアもどんどん生まれてきました。

僕たちのミッションは経営を具現化することですから、部分最適では不十分です。戦略やデザインの要素が統一されて初めてひとつのブランドができあがります。僕たちと佐々部さんたちとの「共創」がこのブランドの強みかもしれません。

カカオにはテロワールを活かす美学がある

──西澤さんが感じるカカオの魅力とはどのようなものでしょうか。

カカオクリュの試作品を食べた時に、カカオにはテロワール(カカオのアロマや味わいの個性をつくる土地の個性)を活かす美学があるなと感じました。ならば、厳選したカカオの個性を多面的に捉えて、想像力を働かせながら最高のチョコレートスイーツを作るブランドにしていきたい。そこで、ブランドコンセプトを「IMAGINE」としました。

「カカオ豆の産地の切り口にラインアップを広げよう」と現在のスタンダード4種類が生まれました。副素材や香りによってさらに奥行きが生まれ、どこにもないスイーツになったと思います。

「カカオロジー」のブランド名は直訳すると「カカオ学」ですが、これは「カカオを多面的に探求していく」というブランドの方向性を意味しています。ロゴデザインもそこからインスピレーションを得ていて、研究者のようなカチッとした印象やカカオの複雑さを多面的に分解し表現しています。いままでにないチョコレートブランドに育ってほしいという思いを込めました。

──カカオクリュのラインアップの中で西澤さんが好きなフレーバーは?

個人的には「#03 スモーク」ですね。解凍したなめらかな状態でウィスキーなどのお酒に合わせるのが好きです。

──今後、どんな商品ラインアップを期待しますか?

アイスクリームなどあったらいいですね。カカオロジーが追求したらどんなアイスができるのだろうとワクワクします。それから、カカオクリュは冷凍でお届けする商品なので、常温で提供できる焼き菓子などもあったら嬉しいですね。ブランドが育つにつれ、探求の可能性が広がっていくのが楽しみです。

ブランディングデザインで日本を元気にしたい

──最後に、今後ご自身が挑戦したいことについてお教えください。

カカオロジーがカカオを探求していくように、僕自身もこれから生涯をかけて「ブランディングデザイン」を探求していきたいと考えています。エイトブランディングを立ち上げて17年目になりますが、ようやく経営をデザインすることの面白さを掴み始めたところです。

僕たちのミッションは「ブランディングデザインで日本を元気にする」ことです。企業経営にデザインが役立てることを証明して、お客さんが元気になってもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。これからも対話を重ねながら一緒にいいブランドをつくっていきたいと思います。

エイトブランディングデザイン WEBサイト :  https://www.8brandingdesign.com/

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